包み隠さない梅酒
ふと鼻を擦ると梅の香りがした。梅酒を仕込んで3日目、つい先ほどまでゆっくりとビンの上下を返していたのだった。
注意すべきところはあるが、小難しいことはない。梅の香りにふわりと心を弾ませながら作る。初めての梅仕事、初めての梅酒の記録をつけておこう。
レシピは尊敬する荻野恭子(おぎの きょうこ)氏を参考にした。彼女はこれまで自らの足で多くの国へ赴き、料理の研究をされてきた。ロシアの料理本からはとりわけ取材の密度や郷土料理への敬意、情熱が感じられる。
荻野恭子・沼野恭子『家庭で作れるロシア料理』を参照しながら、ペリメニやチーズケーキ、ロシア風ザワークラウト、コールスローを。また荻野氏の単著『[続]ポリ袋漬けのすすめ 肉・魚編』では基本の漬け方を覚え、豚肉と大根の蒸しものやチョリソーを作った。荻野氏のレシピとは味覚の相性がよく、全幅の信頼を寄せている。
さて、梅酒を含む果実酒ではホワイトリカーを用いるのが身近であるが、荻野氏のレシピではウォッカを使う。
アルコールの覚醒作用による睡眠の質の低下や、体温上昇によるアレルギー反応の悪化を懸念し滅多なことでは酒を飲まない。よってウォッカと言われても、記憶にあるのはリモンチェッロで使用したスピリタス(ポーランド)のみであった。今回情報を集めたところ癖が無いと評判の「アブソルート」と呼ばれるスウェーデン生まれのウォッカで漬けることに決めた。
【閑話休題】お時間のある成人諸兄姉はどうかアブソルートの公式ホームページを訪れてみてほしい。まず目に入るのが牧草ロールに座った裸のスウェーデン人男性(グンナー氏)である。「アブソルート 包み隠さないウォッカ」といった企業紹介の動画が公開されている。アブソルート、二度と忘れられなくなりそうだ。
新鮮な青梅、ウォッカ(アブソルート)、氷砂糖を用意できたら始めよう。まずは梅を優しく洗い、なり口のヘタをとる。
少し黄味がかっているが気にせず。
水につけてあくを抜く。
ひとつひとつ水気を拭き取る代わりに、ざるで水切りし布巾の上にキッチンペーパーを敷き直射日光を避け数時間乾かした。
ここでアブソルートが登場。
熱湯消毒をしたビンに、氷砂糖、梅を交互に重ねウォッカを注ぎ完成。3ヶ月過ぎから飲むことができるとのことだ。
1ヵ月後、2ヵ月後と熟成され、色や形、香りが変化してゆく様が楽しみである。